子どもの病気?致死率3割の人食いバクテリア?”溶連菌”に要注意!

手足の壊死を引き起こして死に至ることもある「劇症型溶連菌感染症」ですが、最近は中高年を中心に急増し、過去最多となるペースで増えています。

 溶連菌に注意が必要なのは子どもだけではないんです。ときに、私たち成人の血液や筋肉に菌が侵入し、死に至ることさえあるんです。このため、溶連菌には”人食いバクテリア”という異名があるほど!なんと恐ろしい呼び名でしょう…。

 今回は、この溶連菌について、お話しします。

目次

【タイプ1】 – A群溶血性レンサ球菌感染症(子どもが多くかかるタイプ)

 溶連菌を原因とする咽頭炎の患者数は、昨年、40万人を超え、過去最多となりました。今年に入っても過去10年で最多で推移しており、国立感染症研究所が注意を呼びかけています。

 咳やくしゃみによって菌に感染し、2~5日の潜伏期間を経て、38℃以上の発熱、咽頭発赤(のどが赤くなる)などの症状が現れます。通常、1週間以内に症状が改善しますが、菌が出す毒素によって全身に発疹が現れる、猩紅熱(しょうこうねつ)に移行することもあります。

 治療は抗菌剤を服用します。腎炎などの合併症を防ぐため、症状が改善しても自己判断で服薬を中止せずに、処方通りに薬を飲みましょう。

 予防には、手洗い、うがい、咳エチケットが有効です。

【タイプ2】 – 劇症型溶血性レンサ球菌感染症(“人食いバクテリア”)

 通常は、溶連菌に感染しても、無症状、または咽頭炎程度で済むことがほとんどですが、まれに、通常は細菌が存在しない組織(血液、筋肉、肺など)に菌が侵入し、重い症状を引き起こすことがあります。このタイプは、「劇症型溶血性レンサ球菌感染症(以下、「劇症型」)」と呼ばれ、子どもの間で流行する「A群溶血性レンサ球菌感染症」とは区別されます。致死率が30%にも上る、恐ろしい病態です。

 劇症型は、発熱と手足の痛み、腫れから始まりまるのですが、病状の進行が急激かつ劇的で、数十時間で多臓器不全などに陥ることもあります。筋膜などの組織が壊死(えし)することもあり、このことから「人食いバクテリア」と呼ばれています。”多臓器不全”とは、肝臓、腎臓、肺といった生命維持に欠かすことのできない重要な臓器のうち複数が正常に機能しなくなった状態をいいます。

 劇症型は、皮膚の傷口が細菌に触れたりして感染すると考えられており、50歳代以上の中高年に多く発症します。

 抗菌剤による治療が行われるほか、筋膜炎の場合は、壊死を起こしている部分を切除し、感染が拡がることを防ぎます。とにかく、早期に治療を開始することが重要です。疑わしい症状があった場合は、なるべく早く受診しましょう!

お読みいただき、ありがとうございました。
危険な暑さが続き、体調不良を感じる方が増えているようです。水分と栄養をしっかりと補給して、熱中症に気をつけてましょう。
瀧口 景子

著者情報
瀧口 景子
看護師

早稲田大学大学院修了。都内大学病院に勤務後、企業に勤務。看護学生、新人看護職員らを対象とする医療安全講師としても活動中。

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