こんにちは。
がんの中でも、かつて日本人に最も多かった「胃がん」。
検診や治療の進歩により死亡率は減っていますが、中高年以降に多く発症するがんとして、今も注意が必要です。
今回は、胃がんの特徴や予防法、免疫や生活習慣との関係について、最新の研究をもとにわかりやすくお伝えします。
◆ 胃がんのリスクは「静かに」やってくる
胃がんの発症数は、国立がん研究センターの統計によると、
**年間約12万人が新たに診断されており、死亡者数は約4万人(2022年)**です【※1】。
とくに50代以降の男性に多く、次のようなリスク要因があります:
- ヘリコバクター・ピロリ菌の感染(最重要因子)
- 塩分の多い食生活
- 喫煙・飲酒
- 慢性胃炎や胃潰瘍の放置
- 遺伝的要素(家族に胃がんの人がいる)
◆ 自覚症状が出にくいのが胃がんの怖さ
胃がんは、初期にはほとんど症状がありません。
- なんとなく胃が重い
- 食欲が落ちた
- みぞおちがチクチクする
こうした軽い症状は「年のせい」や「疲れ」と思われがちで、がんの進行を見逃すことが多いのです。
◆ ピロリ菌と免疫の関係がカギ
胃がんの最大のリスク要因は、ピロリ菌感染です。
ピロリ菌は胃に長期間すみつくことで、慢性的な炎症を引き起こし、胃の粘膜を傷つけていきます。
この「慢性炎症」こそが、免疫と大きく関係しています。
▶ 免疫が過剰になるとがんを招く?
本来、免疫は体を守るための仕組みですが、ピロリ菌が長くいると、
免疫が過剰に反応して胃の粘膜を自ら攻撃する状態=慢性炎症になります。
この状態が続くと、胃粘膜の細胞に遺伝子異常が蓄積され、がん化が進むことが明らかになっています【※2】。
◆ 胃がんの予防は「除菌」と「生活習慣」が基本
✅ 1. ピロリ菌の検査と除菌治療
- ピロリ菌は保険適用で除菌可能
- 胃カメラ検査と合わせて確認し、陽性であれば除菌治療を受けましょう
- 除菌後も、がんリスクは「ゼロ」にはならないので、定期的な検査を継続することが大切です
✅ 2. 食生活の見直し
- 塩分・加工食品の摂りすぎを控える
- 野菜・海藻・発酵食品を積極的に
- よく噛んでゆっくり食べることで、胃の負担を軽減
✅ 3. 免疫力を落とさない生活習慣
- 睡眠・運動・ストレス管理が免疫細胞の働きを保つカギ
- 胃腸の機能が落ちているときは、消化に優しい食事を心がける
【まとめ】
- 胃がんは日本人に多く、初期症状が出にくい“静かながん”
- 最大のリスクは「ピロリ菌感染」+「慢性炎症」=免疫の暴走
- ピロリ菌の検査と除菌、生活習慣の改善が予防の基本
- 免疫を落とさず、胃をいたわる生活が、がんリスクを減らす第一歩
【参考文献】
- ※1:国立がん研究センター「がん統計2022」
- ※2:Uemura N et al. “Helicobacter pylori infection and the development of gastric cancer.” New England Journal of Medicine (2001)
- ※3:日本消化器病学会「胃がんの診療ガイドライン」2023年版
- ※4:日本ヘリコバクター学会「ピロリ菌除菌の推奨フロー」(2023)