【専門特集】なぜ「大腸がん」は予防できるのか?──腸だからこそ見える、免疫との深い関係

こんにちは。
大腸がんは、日本人にとってもっとも身近ながんのひとつです。

でも実はこの大腸がん、**他のがんとは違い、「見つけやすく、防ぎやすいがん」**として知られています。

今回は、「なぜ大腸がんなら予防できるのか?」という視点から、免疫や生活習慣との関係を“腸”に特化して解説します。


◆ 大腸がんの9割は「ポリープ」から始まる

他の多くのがんと異なり、大腸がんの発生メカニズムは比較的はっきりしています。

それは、腸の内側にできる「腺腫性ポリープ(良性の腫瘍)」が時間をかけてがん化するというものです。

🔍 ポリープ → 5〜10年かけて → がんへ

この「がんになる前の段階=前がん病変」が内視鏡で目視でき、切除できるという点が、大腸がんの最大の特徴です。


◆ 腸は“第二の免疫器官”──全身の免疫力を左右する

腸には、全身の約7割の免疫細胞が集まっているといわれています【※1】。
つまり、腸内環境=免疫の状態とも言えるのです。

近年の研究では、腸内細菌のバランスが崩れると、次のようなことが起こると報告されています【※2】:

  • 発がん性物質を作る細菌が増える
  • 腸のバリア機能が弱まり、慢性炎症が起こる
  • がん細胞を見逃すような“免疫の鈍り”が生じる

👉 大腸がんは「腸内環境」と「免疫」の交差点で起きるがん

だからこそ、腸のケア=がん予防の基礎なのです。


◆ 他のがんと違って「早期発見がしやすい」

たとえば、すい臓がんや肺がんのように初期症状がなく進行も早いがんと比べて、
大腸がんは「症状が出る前に検査で見つけられる」「ポリープのうちに取り除ける」という大きな利点があります。

  • **便潜血検査(毎年1回)**で血液反応が出れば要精密検査
  • 内視鏡検査では、発見からその場で切除が可能なことも

こうした検査の効果は、科学的にも確立しています。

✅ 国立がん研究センターによると、
大腸内視鏡によるスクリーニングで死亡率が最大60%減少するというデータがあります【※3】。


◆ 食生活が発症に強く関係する「数少ないがん」

大腸がんは、食事の内容が直接がんリスクに影響する“数少ないがん”のひとつです。
欧米型の食事、すなわち:

  • 加工肉・赤身肉の過剰摂取
  • 食物繊維不足
  • 高脂肪・高カロリー食

が長年にわたって続くと、大腸内で発がん物質が作られやすくなることが報告されています【※4】。

一方、野菜・海藻・きのこ・発酵食品を意識的に摂取することで、
善玉菌が増え、免疫が強まり、発がん物質が抑制されることも分かっています。


【まとめ】

  • 大腸がんは、「ポリープ→がん」という明確な経過をたどる、予防が可能ながん
  • 腸内環境は免疫と直結しており、「がんの芽」を押さえる鍵になる
  • 食事、腸内細菌、免疫力が大腸がんに特有のリスク因子
  • 他のがんに比べて、早期発見・治療・再発予防がしやすいという“攻めやすさ”がある

【参考文献・出典】

  • ※1:Nagler-Anderson C. “Gut-associated lymphoid tissues and the immune response.” Nature Immunology (2001)
  • ※2:Zackular JP et al., “The human gut microbiome and colorectal cancer: a review.” Cancer Prevention Research (2014)
  • ※3:国立がん研究センター「科学的根拠に基づく大腸がん予防と検診」2023年報告書
  • ※4:World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. “Diet, Nutrition, Physical Activity and Colorectal Cancer” (2018)