がん細胞とNK細胞の関係

がん細胞はどうやって発生するのでしょうか

ここでは、どのようにしてがん細胞が発生するのかをわかりやすくお伝えします。

細胞とDNA

まず、細胞の基本的な仕組みから説明します。私たちの体は約60兆個の細胞で構成されており、それぞれの細胞には遺伝情報を持つDNAが含まれています。DNAは、細胞の成長や分裂、修復などを指示する設計図のようなものです。健康な細胞は、この設計図に基づいて適切に機能しています。

DNAの変異とがん細胞の発生

がん細胞の発生は、DNAの変異から始まります。変異とは、DNAの配列に生じる誤りのことです。変異はさまざまな原因で起こります。例えば、活性酸素がDNAを傷つけたり、化学物質やウイルス感染が原因となることがあります。通常、細胞はこうした変異を修復する仕組みを持っていますが、修復がうまくいかない場合、変異が蓄積していきます。

【ちょっと息抜き】DNAと遺伝子の関係

がん細胞の発生を理解するためには、「DNA」と「遺伝子」についてちょっとした知識が必要です。そこで、2つの関係を、料理に例えてお話しします。

DNAと遺伝子の関係を料理に例えると、DNAはレシピ全体を表し、遺伝子はそのレシピの中の個々の手順と言えます。

DNAはまるでおいしい料理のレシピブックのようなものです。その中には、あらゆる特徴や性質を決めるための指示が書かれています。そして、遺伝子はそのレシピブックの中の1ページのようなもので、そのページには特定の料理を作るための具体的な手順や材料が書かれています。

たとえば、ある遺伝子は「目の色を決める部分のレシピページ」であり、別の遺伝子は「髪の色を決める部分のレシピページ」といった具合です。そして、これらの遺伝子が全体として、私たちの身体や外見を作り上げているのです。

がん細胞に発生に関係する遺伝子

がん細胞の発生に関係する遺伝子には、2種類の重要なものがあります。がん遺伝子と、がん抑制遺伝子です。

  1. がん遺伝子:正常な細胞が成長するために必要な遺伝子が突然変異を起こし、制御不能な成長を促進するようになります。この突然変異した遺伝子が、がん遺伝子です。突然変異する前の正常な遺伝子は細胞の成長を調節しますが、変異してがん遺伝子になると無制限に細胞を分裂させてしまいます。
  2. がん抑制遺伝子:正常な細胞の成長を制御し、がん細胞の発生を防ぐ遺伝子です。細胞の成長を抑制し、DNAの損傷を修復します。しかし、この遺伝子が変異すると、細胞は無制限に増殖し始めます。

がん細胞の特徴
– 細胞周期とアポトーシス(細胞死) –

細胞は通常、細胞周期というサイクルを経て分裂と成長を繰り返します。がん細胞はこのサイクルの制御が失われ、異常に速く分裂します。

さらに、細胞にはアポトーシス(プログラム細胞死)という仕組みがあります。これは、不要になったり、損傷を受けた細胞を自ら死滅させるプロセスです。がん細胞は、このアポトーシスを回避する能力を持ちます。つまり、死ぬべき細胞が生き延びて増殖し続けるのです。

NK(ナチュラルキラー)細胞の役割

NK細胞は、お巡りさんのような存在で、血液中に存在するリンパ球の10~30%を占めています。

がん細胞を攻撃する特別な細胞「NK細胞」

がん細胞を見つける

NK細胞は、がん細胞を見つけるために、がん細胞が持っている特別なサインを探します。これは、がん細胞が通常の細胞とは異なる特徴を持っているからです。NK細胞は、この特別なサインを見つけると、がん細胞に向かって進みます。

NK細胞には、がん細胞を見つけるための、受容体と呼ばれる特別な感知器があります。この感知器は、がん細胞の特徴に反応して、NK細胞をがん細胞の近くに案内します。

つまり、NK細胞はがん細胞を見つけるために、がん細胞が持っている特別なサインを使うのです。

がん細胞を攻撃する

NK細胞は、がん細胞を攻撃する特別な細胞です。がん細胞を見つけると、パーフォリンやグランザイムという物質を出して、がん細胞を攻撃し破壊します。

・パーフォリンは、がん細胞の表面に穴を開けることができる物質です。これにより、がん細胞の中に入り込んで破壊することができます。
・グランザイムは、がん細胞の中に入り込んだ後、がん細胞のDNAを破壊したり、特定のタンパク質を分解したりすることで、がん細胞を破壊します。

NK細胞の活性を下げないために

NK細胞は他の免疫細胞と比べて、加齢や自律神経の乱れの影響を受けやすいということがわかっています。このとから、不規則な生活週間や大きなストレスは、NK細胞を弱める原因になるといえます。例えば、NK細胞の活性は、うつ病になると大きく低下するといわれています。

ストレスといっても、良いストレスと悪いストレスがあります。どうやっても逃れられない辛いストレスはNK細胞の活性を下げるといわれていますが、逆に、戦うときに感じるストレスは、脳内でアドレナリンが分泌されて、NK細胞の活性化が起こるといわれています。動物実験でも、完全にストレスのない状態にしてしまうと、寿命が短かくなるということがわかっています。適度なストレスは必要なのです。

他にも、体を温めることが重要です。これは、NK細胞に限らず、他の免疫細胞についても同じことが言えます。

ブロッコリー多糖体とNK細胞

ブロッコリー多糖体エキスは、イマジン・グローバル・ケア株式会社と東京大学が開発した免疫力を高める成分です。この成分を配合した食品を摂取することで、血中のNK細胞が活性化する傾向が確認されています。

参考文献

Hallmarks of Cancer: The Next Generation, Cell, 4, 144(5):646-674(2011)
Signaling pathways in cancer metabolism: mechanisms and therapeutic targets, Signal Transduction and Targeted Therapy, 8:196(2023)
Human natural killer cells., Blood, 112(3):461-469(2008)
Natural cytotoxic activity of peripheral-blood lymphocytes and cancer incidence: an 11-year follow-up study of a general population., The Lancet, 356(9244):1795-1799(2000)
In search of the ‘missing self’: MHC molecules and NK cell recognition., Immunology Today, 11(7):237-244(1990)
ブロッコリー抽出加工食品の継続摂取によるヒトの自然免疫賦活作用に関する試験, 薬理と治療, 40(6):489-494(2012)
和田秀樹 奥村康,「80歳の壁」は結局、免疫力が解決してくれる, 宝島社(2022)
※当ページは論文の内容を解説することを目的としており、特定の疾患に対する治療法や予防法を推奨するものではありません。

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