誰でもかかることのある風邪ですが、高齢者が風邪をひくと、若い頃と比べて免疫力が低下しているために、合併症を起こしやすいので、注意が必要です。ただの風邪だと思っていたら、重篤な状態になりつつあるのを見過ごしてしまう場合もあるのです。
そもそも「風邪」とはなんでしょう?
くしゃみ、鼻水などの症状があった場合、「風邪かな?」と思いますよね。風邪は、細菌やウイルスの感染によって引き起こされる上気道の感染症です。上気道とは鼻から喉までの空気の通り道のことで、感染によってここに炎症が発生することを風邪といいます。
原因が細菌なら、抗生剤を使うことで効果が期待できます。しかし、風邪の原因の9割はウイルスといわれていて、ウイルスに直接効く薬は少ないのが現状です。
風邪は万病のもと
「風邪は万病のもと」と言われますが、それは風邪が多くの合併症を引き起こす可能性があるからです。
例えば、風邪をひくと免疫力が弱まり、他の感染症にかかりやすくなります。風邪をひいている間やその後は、他の病原体に対して弱くなり、併発のリスクが高まります。また、風邪の症状が長引くと体力や気力が低下し、健康状態が悪化して他の健康問題が発生するリスクも高まります。
これらの理由から、「かぜは万病のもと」という言葉が使われるのです。風邪を予防し、早期に適切な対応を取ることが、他の病気の発生を防ぐために重要です。
高齢者の風邪にはとくに注意が必要
若い人と高齢者の風邪をひいた時の違いについて、一般的に次のようなものがあります。
若い人 | 高齢者 |
若い人は一般的に免疫力が高く、風邪をひいても比較的短期間で回復することが多いです。また、風邪の症状が比較的軽く、重症化することは稀です。通常はのどの痛み、鼻水、微熱やくしゃみなどで済みます。合併症のリスクが低いといわれています。 | 加齢に伴い免疫力が落ちるため、高齢者は風邪をひきやすくなり、回復にも時間がかかることがあります。そして、免疫力と体力が低下しているため、重症化しやすく、風邪をきっかけに他の健康問題が悪化することもあります。 |
免疫力が落ちている高齢者が風邪をひいた場合、放っておくと重症化するリスクが高いといわれています。また、高齢者の場合は、症状がはっきりと現れにくいということにも注意が必要です。
高熱や酷い咳の症状があれば早めに病院で診察を受けられますが、症状が軽いと見過ごしがちです。高齢者は体力が落ちているため、重症化すると回復が難しくなる可能性があります。たとえ、平熱で、咳や痰も出ていなくも、いつもと違う場合は気をつけてください。いつも食欲があるのに食べない、まっすぐ座れないなどは体調不良のサインです。また、よく喋る人が静かで反応が遅い、うつらうつらしている場合も注意が必要です。機嫌が悪く見えることも、体調が悪いことを伝える元気がないサインかもしれません。
風邪の予防
年齢に関係なく、風邪を予防するための対策は同じです。しかし、高齢者は免疫力が低下しているため、基本的な衛生対策に加え、適切な生活習慣、予防接種、清潔な環境の維持など総合的な対策が必要です。特に早期の対応が重症化を防ぐ鍵となります。
- 適切な手洗い
高齢者は免疫力が低下していることが多いため、こまめな手洗いが非常に重要です。外出後、食事前、トイレ後には、石鹸と水で20秒以上手を洗う習慣をつけましょう。 - 予防接種
定期的な予防接種を受けることが推奨されています。 - 健康的な生活習慣
高齢者はバランスの取れた食事、十分な睡眠、適度な運動を心がけることが重要です。 - ストレス管理
ストレスは免疫力を低下させるため、リラックスできる時間を持つことも大切です。趣味や友人との交流を楽しむことで精神的な健康も保ちましょう。 - 早めの対応
風邪の初期症状を感じた場合、早めに医療機関を受診することが重要です。特に高齢者は風邪が重症化しやすいため、早期の診断と治療が重要です。
参考文献
・吉村昭彦, 『免疫「超」入門』, 講談社(2023)
・齊藤紀先, 『休み時間の免疫学』, 講談社サイエンティフィック(2010)
・奥村康, ウソだらけの健康常識「不良」長寿のすすめ, ワック(2017)
・Rhinovirus: More than Just a Common Cold Virus, J. Infect. Dis., 195(6):765–766(2007)