なぜ、あの頃のように疲れがとれないのか?──体と心の「疲労メカニズム」をわかりやすく解説

こんにちは。
「寝ても疲れがとれない」「1日動いたら、次の日は何もできない」──そんな声をよく耳にします。

年齢のせいにしがちですが、実は体の中ではしっかり理由(メカニズム)があるのです。
今日は、「疲れがとれない本当のしくみ」について、やさしく解説していきます。


目次

◆ 疲れは「脳」と「体」が発する警報

まず知っておいてほしいのは、疲れには2種類あるということです。

  • 身体的な疲れ:筋肉や内臓が疲れている状態
  • 脳の疲れ(中枢性疲労):脳が「これ以上動くと危ない」とストップをかけている状態

特に中高年になると、「脳の疲れ」の影響が大きくなることがわかっています。


◆ 疲労がたまる本当の理由①:酸化ストレスと炎症

人間は動くたび、細胞の中で「活性酸素(かっせいさんそ)」というものを生み出します。
これは体をさびつかせる原因であり、免疫や筋肉にもダメージを与える物質です。

若い頃は、この活性酸素をうまく処理できました。
でも、年齢とともにその力(抗酸化力)が落ちていくため、処理しきれない酸素が体の中に残り、細胞が傷つきやすくなるのです【※1】。

さらに、これにより**「微細な炎症(びさいなえんしょう)」**が続くようになります。これが慢性疲労の大きな原因です。


◆ 疲労がたまる本当の理由②:ミトコンドリアの働きが低下

「ミトコンドリア」──どこかで聞いたことのある言葉ではないでしょうか?

これは、体の中でエネルギー(ATP)をつくる小さな工場のようなものです。
ところが、加齢・ストレス・栄養不足などで、このミトコンドリアの働きが弱ってしまうと、十分なエネルギーが作れず、疲れが抜けない状態になってしまいます【※2】。

例えるなら、「ガソリンが十分に届かなくなった車」のようなものです。


◆ 疲労がたまる本当の理由③:自律神経の乱れ

自律神経は、体温・心拍・睡眠・内臓の動きなどをコントロールしています。

しかし、加齢やストレス・生活習慣の乱れによって、交感神経(緊張)と副交感神経(リラックス)のバランスが崩れやすくなります。

このバランスが崩れると、体が休むべきときにうまく休めず、「寝たのに疲れがとれない」状態が続いてしまうのです【※3】。


◆ 疲労をためないために、今すぐできること

疲れを根本からケアするには、以下の3つを見直してみましょう。

① 食べるものを少しだけ変える

  • 抗酸化食品(緑黄色野菜、海藻、きのこ)
  • ミトコンドリアを元気にする栄養(ビタミンB群、コエンザイムQ10)

② 「休む力」を育てる

  • 眠る前のスマホをやめる
  • 深呼吸やストレッチで副交感神経を整える

③ 「無理しすぎない日」をつくる

  • 忙しい日が続いたら、あえてゆるく過ごす1日を設ける
  • 「がんばりすぎない習慣」も、大事な健康法です

◆ まとめ:疲れがとれないのには、理由がある

年齢を重ねると、「なんとなく疲れが抜けない」と感じる日が増えるかもしれません。

でもそれは、体からのメッセージ
酸化、エネルギー不足、自律神経の乱れ──体は精一杯がんばっているのです。

疲れを無視せず、生活を少し見直すこと。
それだけで、きっと今よりラクに、元気に過ごせるようになります。


【参考文献】

  • ※1:厚生労働省 e-ヘルスネット「酸化ストレスと健康」
  • ※2:Robert W. Balaban et al. “Mitochondria and Aging.” Annual Review of Physiology(2020)
  • ※3:小林弘幸著『なぜ疲れやすい人は「自律神経」が乱れているのか』(講談社、2021)
目次