臨床試験の結果から、ブロッコリー抽出エキスを摂取すると、マクロファージとNK細胞が循環的に活性化されることで自然免疫反応が強化されることが示唆されました。
そこで、さらに検証するために、マクロファージだけを対象として試験をしました。具体的には、ブロッコリー抽出エキスがマクロファージを直接活性化させるかどうかを調べました。

マクロファージとは?
試験の結果を説明する前に、マクロファージについて簡単に復習しておきましょう。

マクロファージは、全身をパトロールしている免疫細胞です。ウイルスや細菌などの病原体、感染細胞やがん細胞を見つけると食べて排除します。そして、他の免疫細胞も活性化するはたらきがあります。異物を食べたマクロファージが、その情報をNK細胞や免疫の司令官であるヘルパーT細胞に伝えます。情報を受け取った細胞は、自身で、またはさらに他の細胞にはたらきかけることによって、異物を排除します。
ブロッコリー抽出エキスによるマクロファージを活性化を確認
試験方法
マウス由来マクロファージにブロッコリー抽出エキスを添加し、活性化レベルと、他の免疫細胞を活性化するサイトカインとよばれる物質の分泌量を測定しました。
結果
効果① マクロファージの活性化
まず、ブロッコリー抽出エキスを加えたときに、マクロファージがつくる一酸化窒素の量を測りました。
一酸化窒素(Nitrite)は微生物、ウイルス、がん細胞などに対する防御反応に関係しています。マクロファージがつくる一酸化窒素の量が多いほど、マクロファージがより活性化しているといえます。

※controlは、ブロッコリー抽出エキスを加えていない状態。
ブロッコリー抽出エキスの濃度が高いほど活性化され、最も高い濃度だと、30倍近くも活性が上がることがわかりました。
効果② マクロファージの貪食能(異物を食べて排除する能力)も上昇
貪食能とは、マクロファージが、ウイルス感染細胞やがん細胞などの異物を食べて排除する能力のことです。
貪食能が大きいほど、異物を排除する能力が高いといえます。

※controlは、ブロッコリー抽出エキスを加えていない状態。

※controlは、ブロッコリー抽出エキスを加えていない状態
貪食能が大きく高まることがわかりました。
ブロッコリー抽出エキスの濃度が低い場合でも、2.5倍も貪食能が高まることから、低濃度でも十分に活性化されることがわかりました。
活性化したマクロファージからサイトカインの分泌も増加した
サイトカインとは、免疫を調節する物質です。
活性化したマクロファージは、サイトカインを分泌します。サイトカインは、ヘルパーT細胞などの免疫細胞を刺激し、様々な免疫応答を促進します。免疫系を活性化し、免疫細胞を増殖させて患部に動員したり、がん細胞や病原体の排除を促進します。
ブロッコリー抽出エキスで活性化されたマクロファージで、主要なサイトカインであるTNF-α(腫瘍壊死因子)とIL-12(インターロイキン-12)が増加しているかどうかを調べました。
TNF-α(腫瘍壊死因子)が増加
TNF-αとは、腫瘍壊死因子と呼ばれ、感染防御と抗腫瘍作用に関わるサイトカインです。
そして、TNF-αは、初期の感染防御に重要な「好中球」を活性化します。
ブロッコリー抽出エキスによって、マクロファージのTNF-αが増加することが確認できました。

※controlは、ブロッコリー抽出エキスを加えていない状態。
IL-12(インターロイキン12)が増加
IL-12は、マクロファージで産生されるNK細胞活性を増強させるサイトカインです。
また、免疫機能が十分でないT細胞をTh1細胞へと成熟させます。Th1細胞はウイルス感染防御に重要な免疫細胞です。Th1細胞がキラーT細胞に指令を出すことで、ウイルス感染細胞を排除させます。
ブロッコリー抽出エキスによって、IL-12が増加することが確認できました。

※controlは、ブロッコリー抽出エキスを加えていない状態。
まとめ
臨床試験の結果から導かれた、「ブロッコリー抽出エキスによってマクロファージが活性化する」という仮説が支持される結果となりました。

次の展開
さらに確証を得るために、今度は、ヒトのNK 細胞で試験を行いました。